Jay Parkが作った2022年生まれの「伝統酒」ウォンソジュが面白い
突然ですがみなさん韓国で「パク·ジェボム焼酎」と言われているウォン焼酎(WON SOJU)についてご存知ですか?
私は韓国のHip-hopやR&Bが好きなんですが、色々周辺情報を追っていた中でたどり着いたウォン焼酎。ミュージシャンが作ったお酒というだけで、どんなものだろうと気を引きますし、調べていくうちにただの芸能人が広告しているプロジェクトや、名前だけを貸しているIP事業ではなさそうだ、という面白い情報が色々でてきたので、ブログにまとめてみたいと思います。
ちなみにこれは5月に一度韓国語で記事をまとめたものを元に書いたブログなので、若干情報が古い部分もあるかもしれません!ご了承ください。そして誰も疑わないと思いますが、念のためタイアップなどではなく純粋な筆者の趣味で書いた記事です。
- WON SOJU(ウォンソジュ)とは?
- WON SOJU(ウォンソジュ)の種類について
- 韓国で「伝統酒」の認定を受けるための基準
- WON SOJU(ウォンソジュ)を作るキーパーソン達
- WON SOJU(ウォンソジュ)の今後
WON SOJU(ウォンソジュ)とは?
韓国大手Hip-hop、R&Bアーティスト所属事務所のAOMGとH1GHR MUSICのファウンダーであり、自身もアーティストのパク·ジェボムが作った焼酎「원소주(ウォンソジュ・ウォン焼酎)」 2022年2月、汝矣島(ヨイド)のザ·現代ソウル ポップアップストアを皮切りに発売された新しい焼酎ブランドです。
ウォン焼酎が発売されて以来、これまで様々なイシューを作ってきました。 2022年2月にザ現代百貨店ソウルで行われた発売記念のポップアップストアでは、発売から1週間で初動で準備していた20万本を完売。
記録的な人数のオープンラン(オープン前から店に並ぶこと)、同時に販売したグッズは初日の午前中には売り切れ、注目度の高さを世間に知らせるスタートとなりました。 この記録は、様々な人気ブランドのポップアップを開催している、ドヒョンデソウルの2021-2022のPOP UPストアに関するレポートにもSNS関心度TOP10の中で食品部門では唯一名前が挙がったブランドと記載されています。
公式サイトのプロジェクトレポートにも書かれていますが、当時会場でLOCOやGRAYなどがライブを行うと告知していたのもあり、多くの人が入場予約を求めてドヒョンデ全体の予約システムのサーバーがダウンした程でした。
私も当時軽い気持ちで行こうかな〜と予約システムを見て待機数の多さに即諦めた記憶があります。
その後も地道にポップアップストアを開催し、その度にウォン焼酎を求める人がたくさん集まりました。
2022年
2月 The hyundai seoul ポップアップストア
3月 ウォン焼酎 ✕ NICE WETHER ポップアップストア
5月 ウォン焼酎 ✕ GS25 ポップアップストア
7月 ウォン焼酎 GS25の全国支店で販売開始
11月 カカオトーク プレゼント 入店
2023年
(他にもタイ、日本、香港、中国、モンゴル、ベトナム、シンガポール、イギリス、オーストラリアなど世界各国への進出を予告)
4月 ウォン焼酎 ✕ DIESEL ポップアップストア
5月 パック型焼酎 ウォン焼酎 TO GO 販売開始
※2023.05時点
当時は希少マーケティングをしているんじゃないか?という疑惑が囁かれる程、商品が手に入りづらく何件もお店を回ってやっと手に入れた!というような話をよく見かけましたが、 GS25コンビニで普及型製品が販売開始され、カカオトークプレゼントに入店してからは在庫供給が安定し、ホームプラスなどの大手スーパーでも取り扱いが始まり、多くの消費者が気軽に手に入れられるようになりました。
当時の勢いを象徴するエピソードとして、GS25ではコンビニ全体の商品の中で売上1位を記録し、不動の1位のおにぎりも上回った数字を記録したとマーケティングチームのインタビューで話されています。他にも創業1年でカロスキルに社屋を新しく建てたとか…!
WON SOJU(ウォンソジュ)の種類について
主要商品は3つ。
「オリジナル」を基本に、
国内で開発された酵母を、他の焼酎ブランドに先駆けて使用している「クラシック」。
「オリジナル」で経ている生産工程の一つである2週間の熟成を経ない「スピリット」は生産量拡大のため急遽開発されたものだといいます。
また、スペシャルエディションとして限定パッケージや、珍しいパック型焼酎なども次々と販売されています。
写真:公式サイトより
そしてウォン焼酎の最大の特徴は、
韓国伝統の蒸留式焼酎として、水などで薄めずに100%国産米で作っている部分です。
そしてウォン焼酎は国から認められた「伝統酒」の認定を受けています。
韓国で「伝統酒」の認定を受けるための基準
では、韓国ではどんな条件を満たせば「伝統酒」として認められるのか見ていきましょう。
一般的に売られているマッコリや、昔から販売されている韓国焼酎のようなものは「伝統酒」だろうという、なんとなくの予想を裏切る、意外と厳しい基準が定められていました。
■農業経営団体が直接生産している
または100%韓国生産の農産物を使用している
■無形文化財としての認定を受けた製造者が生産している
■食品名人(식품명인)としての認定を受けた人が製造している
このどれかの条件を満たせば伝統酒として認められ
✔WEBでの通販が可能
✔酒税50%の減免
という特典を受けることができます。
実際、多くの国内で販売されているマッコリや焼酎が以上の条件を満たしていないため、伝統酒として認められないということは意外と多くの韓国人にも知られていないようです。
ウォン焼酎は1つ目の条件を満たしているため、2022年に誕生した新しいお酒ブランドであるにもかかわらず「伝統酒」として認められているわけです。先に紹介したマーケティングチームのインタビュー内では、「韓国産」「伝統酒」という部分をブランドアイデンティティとして強く掲げているとも話していました。
WON SOJU(ウォンソジュ)を作るキーパーソン達
そんなウォン焼酎を作る、重要人物を紹介します。
韓国ではスタートアップ企業の初期チームで必要な人材について「3H」という名称が付けられているのですが
【 3H = Hustler(ハスラー)、Hipstar(ヒップスター)、Hacker(ハッカー)】
ウォンスピリッツ株式会社の経営陣を見ると3Hのバランスが素晴らしいと思いました!
Hipstar: パク·ジェボム(Jay park)
代表取締役のパク·ジェボム氏はHipstarであり、ベンチャー精神に溢れたアーティストといえるのは韓国音楽に詳しい方ならお分かりですよね。
個人でのアーティスト活動もしながら、2013年にヒップホップR&BレーベルAOMG設立。 2017年にまた別のレーベルH1GHR MUSICを設立し、現在はその両社の経営権を他の人に譲り渡し、ウォンスピリッツとMORE VISIONという企画会社を運営しています。
パク·ジェボム氏の焼酎愛は昔からずっと続いてきました。
2018年に発表した曲その名も「soju(焼酎)」
発売開始と同時に公開されたHYPEBEASTのインタビューには、アメリカでバーに行くと、例えばサントリーウイスキーはあるけど、韓国焼酎が無いことが多く、K-POPが世界中に影響力を強めている昨今、韓国をお酒の面でもプレゼンテーションしようという挑戦を始めたと話しています。
パクジェボム氏はウォン焼酎のために自分のヒップスター的な影響力を、本当〜に上手に使っていると思います。
SHOW ME THE MONEYの参加曲の歌詞に発売予告を入れたり、
Youtube ON AIR (Feat. 로꼬, 박재범 & GRAY) - 릴보이より「俺の焼酎来年発売予定」というストレートな宣伝を歌詞に
2023年ソウルで開催されたGUCCIファッションショーに招待された時もさりげなくウォン焼酎を手に持ってアフターパーティーに登場。笑
わたしが2022年に遊びに行ったThe CryGroundというフェスに登場した時は、アンコールでステージにウォン焼酎を持って現れて飲むパフォーマンスをしたりしていました。
のちにご紹介するクリエイティブ責任者の方のブックトーク動画で話していたことですが、2022年度に関しては広告費に予算をほぼかけていないのにも関わらず、この"ジェボム力"と口コミのみで商品に多くの注目を集めたといいます。
歌詞を広告枠として活用しまくるマンだな pic.twitter.com/DLHXPHsjAB
— 나나에 Barbie見て (@nnn777ee) 2023年5月23日
Jay Park - 'Candy (Feat. Zion.T)' より
パクジェボム氏は自分のこだわりを追求する代わりに単価や原価や収益などについては考えていないと言います。そのおかげで商品の完成度を高めることができたそうです。
では、そのようなビジネス的な部分を支える人物はどんな人達でしょうか?
Hustler①: キムヒョンソプ
1人は社内取締役のキムヒョンソプ氏
この記事によると、セレブIPを活用してマーケティングを行う会社、カルチャーアンドコマースを設立した方です。済州島にあるG-DRAGONカフェや、合井にあったMINOのカフェもその方が関わっているそうです。
Hustler②: キムスヒョク(DJ Pumkin)
もう一人の社内取締役のキムスヒョク氏は、DJ Pumkinの名前でアーティストとして活躍しながらAOMGのCEOを務める人物です。
AOMG所属アーティストのGRAYが上記のインタビューの中で「彼はアーティストの気持ちも知っていながら、ビジネス的なセンスが優れているおかげでAOMGの事業がうまくいった」と話すような人物だそうです。
単にビジネスだけを追求する人だけがハスラーにいるのではなく、アーティスト的なセンスを持った方も経営に関わっているということが、商品のヒップさを失わない秘訣だと思いました。
ちなみにウォン焼酎人気の秘訣の一つでもある商品のデザインは、AOMGをはじめとする韓国ヒップホップ・R&Bアーティストたちのロゴマークなどを多く手がけたデザイナーのナムムヒョン氏が手掛けています。
伝統酒のパッケージデザインに音楽分野で活躍するデザイナーを採用することは、この経営陣でなければなかなか生まれない発想だったんではないでしょうか。
最後に パクジェボム代表の後ろに隠れた企画者、CCC(最高クリエイティブ責任者)のキムヒジュンさんをハッカーとして紹介します。
Hacker: キムヒジュン
キムヒジュン氏は10年以上、旅行とお酒に関するコンテンツを作る仕事をされてきた方だったそうです。
世界を周る中でスコットランドの酒文化を見て、自分も自身のお酒を作ってみたいと思っている最中に、フェイスブックを通じてウォン焼酎の企画の勧誘を受けてチームに参加。
キムヒジュン氏は開発中のエピソードとして「私たちはパクジェボムという強力な武器を持っていながら、成功するためにたくさん悩んだ」と話していました。
全国を周りながら協業してくれる醸造所を探し、販売許可や 販売ルートを確保するために1年半が必要だったと、自身の著書でも述べています。
원소주の本まで出ていると知り、読んでみる pic.twitter.com/63jjZcuDr4
— 나나에 Barbie見て (@nnn777ee) 2023年5月8日
ウォン焼酎が伝統酒としての認証を受け、そのことを武器にしようと実現までに多くの努力をした人物です。
WON SOJU(ウォンソジュ)の今後
今後はウォン焼酎ならではのブランドアイデンティティを作り、消費者と一緒に「ただ飲むだけじゃなくて、ヒップなものを楽しむ」ということが出来るブランドとして、様々な企画や商品を発信していきたいとウォン焼酎チームは話しています。
今年の夏から始まったようですが、光化門フォーシーズンズホテルにあるバーOULで、ウォン焼酎を使ったカクテルを飲むことができます。お酒がたくさん飲めない方も美味しく飲みやすいようなアレンジのカクテルがあったり、お店もおしゃれで知人に連れて行ってもらいましたが、おすすめです◎(カクテルの値段が商品1本より高いけど!)
瓶とスペシャルパッケージのディスプレイも(肝心のカクテルの写真を撮り忘れました)
日本ではまだ具体的な発売予定が発表されていませんが、進出予定国として名前があげられていたので発売された際にはぜひ多くの人に愛されるブランドとなることを応援しています!